
目次
はじめに:夏の終わりに灯る、祈りのかたち
8月16日、京都の夜空に浮かび上がる「五山送り火(ござんのおくりび)」。
お盆の精霊を送るこの伝統行事は、京都の夏の最後を飾る静かな儀式です。
「大」「妙・法」「船形」「左大文字」「鳥居形」――
5つの山に次々と点される火は、ただの行事ではなく、
**亡き人への想い、自分自身への問いかけを込めた“光の手紙”**のようにも感じられます。
五山送り火とは――千年都市が守る“静かな炎”
お盆の終わりに、霊を送る火
五山送り火は、お盆に帰ってきたご先祖の魂を再びあの世へ送るための火。
平安時代の風習が形を変えながら今に伝わる、**京都ならではの「静かなまつり」**です。
最も有名なのは「大文字焼き」として知られる如意ヶ嶽の“大”。
20時ちょうど、東山の闇に浮かぶその炎は、見る者の心をしんと鎮めます。
山に浮かぶ光と、町に流れる静寂
火が灯るのはほんの数十分。
けれど、その間、京都の町はざわめきが消え、祈りだけがそっと流れる空気に包まれます。
誰もが何かを思い出し、誰かを思いながら、空を見上げる。
その時間が、送り火の本当の意味なのかもしれません。
火を見つめる時間が、心を結び直す
「別れ」ではなく「送り出す」という感覚
送り火の夜に感じるのは、悲しみではなく、清らかな感謝。
「会えてよかった」「また来年まで元気で」――
そんなやさしい言葉が、灯りの中に宿っています。
炎が消えたあとも、その余韻は胸の奥で静かにゆらめき続けるのです。
夏の終わりにふさわしい、“心を整える時間”
猛暑のなかを駆け抜けてきた夏。
その終わりに立ち止まり、空を見上げることで、
自分の中の静けさや、願いの輪郭がはっきりと見えてくる。
送り火は、そうした“内なる静寂”へと誘う行事でもあります。
今日のひとこと:見送ることで、つながりは続いていく
今日は、「静かに見送る日」。
見送ることは、手放すことではなく、心の奥で結び直すことなのかもしれません。
空に浮かぶ炎の文字に、言葉にならない想いを重ねて、
もう一度、やさしい自分に戻ってみてください。
まとめ
- 五山送り火は、お盆の精霊を見送る京都の夏の終わりの儀式。
- 「火」の美しさと静けさが、人の記憶と祈りを結び直してくれる。
- 見る人の数だけ、送り火には意味があり、感情がある。
- 今日という夜を、自分自身と向き合う“心の節目”として過ごしてみては。

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