
はじめに:赤い花が語る、遥かな時間
奈良県・明日香村――
ここは日本のはじまりを今に伝える、“時の谷間”のような場所。
9月下旬、秋分の気配が漂い始める頃、
棚田のあぜ道や古道のそばに鮮やかな彼岸花が咲きそろいます。
燃えるような赤い花は、ただの秋の彩りではなく、
「あの世とこの世の境界を示すもの」として古来より人々に語られてきた存在。
今日は、その花とともに、記憶と祈りの風景をめぐる旅へ出かけましょう。
彼岸花が咲く風景――静けさのなかの鮮烈な赤
棚田と彼岸花の共演
稲穂が色づきはじめた明日香村の棚田では、
そのあぜ道に沿って、まるで縁取るように彼岸花が咲き誇ります。
黄緑の稲、青空、そして真紅の花のコントラスト。
それは、目を見張るほどに美しく、どこか懐かしい風景でもあります。
花々は風にそよぎながらも、一本一本が意志を持って咲いているように見えるのです。
古道を歩く、心の道をたどる
石舞台古墳や高松塚古墳、亀石など、
数々の史跡を結ぶ飛鳥古道を歩けば、
千年の時間が、花と風のなかに溶け込んでいるのを感じるでしょう。
その道は、「観光」ではなく**“記憶をたどる時間”そのもの**。
彼岸花が静かに咲くことで、私たちの中の祈りや別れの感情が浮かび上がるのです。
花を通して見つめる、いのちと時間
「彼岸」の意味を、歩きながら考える
“彼岸”とは、煩悩を超えた悟りの境地のこと。
彼岸花は、ちょうどその頃に咲くことから、生と死の象徴のように語られてきました。
明日香の風景のなかでこの花を見つめていると、
それはただの植物ではなく、「人間の時間」に寄り添って咲く存在であることがわかります。
無言の花が教えてくれること
彼岸花は、香りもなく、散る姿も見せず、
ただ咲いている時間だけが印象に残る花です。
それは、今ここに在ることの重みや、
過去を悼むことの尊さを、そっと教えてくれているのかもしれません。
今日のひとこと:記憶とともに、歩いていく日
今日は、「思い出と一緒に歩く」日。
明日香村の彼岸花は、
誰かの面影や、忘れていた記憶をふと思い出させてくれるかもしれません。
それは、寂しさではなく、
「時間とつながっている」ことの安心感。
赤い花の道を、静かに、でも確かに進んでいきましょう。
まとめ
- 明日香村は、日本の原風景がそのまま残る場所。
- 秋分を前に、棚田と古道を彩る彼岸花が圧巻の美しさを見せる。
- この時期の旅は、風景とともに記憶や感情に向き合う時間になる。
- “祈り”と“別れ”をテーマにした、深く静かな秋の一日を味わえる。

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