
はじめに:秋の足音が聞こえる、大地の湯けむりへ
北海道・美瑛町。
その奥地に位置する十勝岳温泉は、標高1,280mという日本屈指の高所に湧く秘湯。
山の端から立ち上る霧と白煙が、荒涼とした火山地帯にやわらかな命のぬくもりを与えてくれます。
9月上旬、この地は本州より一足早い“秋の入口”。
鮮やかな紅葉にはまだ早いものの、空気は澄み渡り、足元の草木がほんのり色づき始めます。
十勝岳温泉が魅せる、静と動の風景
湯けむりの向こうに広がる、秋の予感
地熱の高い十勝岳では、岩間から立ち上る白煙が風景の一部。
この独特の光景は、まるで地球が深呼吸しているような“生命の現場”にも見えます。
温泉街には人の気配もまばらで、風が運ぶ硫黄の香りがどこか懐かしい。
その湯けむりの向こうに、色づきかけたカエデやダケカンバが季節の訪れを告げています。
山と霧と、音のない世界
朝早く訪れれば、一面に広がる雲海と秋霧に出会えることも。
視界を覆う白の世界に、鳥の声だけが響くとき、
私たちは自然のスケールに“身を預ける”という感覚を取り戻します。
ここでは、見るものすべてが静かに語りかけてくるよう。
「秋が来るよ」と、空気そのものが教えてくれる場所です。
秋を迎える身体と心に、温泉の記憶を
荒涼の地に湧く湯のやさしさ
十勝岳温泉の湯は、酸性の硫黄泉。
地熱を感じるような熱さの中に、じんわりと染みわたる温もりがあり、
湯船から見える風景もまた、火山と紅葉のコントラストが印象的です。
外の空気はひんやりとしていて、“冷たさ”と“温かさ”の対比が心に残ります。
この季節、この土地でしか味わえないもの
高山植物が実を結び、風が少しずつ湿り気を帯びるこの季節。
今このときだけの風景を、肌で、五感で感じられるのが、十勝岳温泉の旅の魅力です。
時間が止まったかのような静寂と、温泉のぬくもり。
その両方を携えて帰る体験は、日常へのやさしい予告編にもなるのです。
今日のひとこと:はじまりの秋に、心をあたためる日
今日は、「変わりゆく季節を受け入れる」日。
夏が過ぎてしまうことに少し寂しさを感じるかもしれません。
でも、季節が進むからこそ、今を味わう尊さが際立つのです。
湯けむりの中で、自分の心の奥から聞こえる“声”に、
少しだけ耳をすませてみてください。
まとめ
- 十勝岳温泉は、秋の始まりを“視覚と温度”で感じられる特別な場所。
- 湯けむりと秋霧が、静かで雄大な自然の呼吸を見せてくれる。
- 高所ならではの早い紅葉の兆しと、肌寒さを癒す温泉のぬくもりが共存。
- 「心の準備」が整う、はじまりの秋にぴったりの温泉旅。

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