
目次
はじめに:旅は、風景よりも“空気”を記憶する
木曽谷の山間に連なる「木曽路」は、かつて江戸と京都を結ぶ中山道の重要な街道でした。
現在も残る妻籠宿(つまごじゅく)や馬籠宿(まごめじゅく)は、電線すら地中に埋められた、時代が止まったかのような町並み。
真夏の午後、石畳の坂道を下駄で歩くと、
足元から響く音が“記憶の中の日本”を呼び起こしてくれます。
木曽路の宿場町――江戸が今も息づく風景
江戸と明治の“あわい”を歩く
木曽路は、旅人が峠を越え、川を渡りながら進んだ街道。
その中継地点として栄えた宿場町には、格子戸・なまこ壁・本陣跡といった建築が今も残されています。
とくに妻籠宿は、「売らない・貸さない・壊さない」の三原則で町並みを守り続けてきたことで知られ、
歩くだけで**“時間を逆行しているような感覚”**に包まれます。
下駄の音と、静かな午後の風
舗装されすぎていない石畳、どこか懐かしい木のにおい、そして下駄がコツコツと響く音。
夏の陽ざしは強いけれど、軒先に流れる風と、川のせせらぎがやわらかな涼をもたらしてくれます。
忘れられないのは、豪華さではなく“質素な美”
見せるよりも、隠す文化
木曽の町には、華美な飾りはありません。
でもその中には、用の美・静の美が宿っています。
瓦ひとつ、障子一枚にしても、「無駄のない美しさ」があるのです。
ひと休みする縁側の時間
茶店の軒先でいただく冷たい麦茶、
風鈴の音と、すだれ越しの景色。
そんな“間(ま)”のある時間が、この地の魅力です。
今日のひとこと:歩くことで、過去とつながる
今日は、「時間を踏みしめる」日。
木曽路を歩いていると、自分の足音が道の記憶に重なっていくような感覚になります。
今、自分が立っているこの道も、かつて誰かが夢や不安を抱えて歩いた道。
旅とは、風景を見ることではなく、“歩いた時間”を持ち帰ることなのかもしれません。
まとめ
- 木曽路は、中山道の宿場町文化が色濃く残る場所。
- 石畳と格子戸が、日本の“かつて”と“今”を結ぶ静かな橋渡しとなっている。
- 下駄の音や風の匂いといった感覚が、忘れていた日本の風景を思い出させてくれる。
- 一歩ずつ踏みしめて進むことで、過去と現在がひとつになるような旅を味わえる。

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